人間科学部

卒業研究:逆流性食道炎のストレス要因の検討【健康科学研究室】

理学館 健康科学研究室の実験室にて

   健康科学研究室(佐藤友亮教授)では、生命科学をおもなテーマとしています。慢性骨髄性白血病肝臓癌などの腫瘍細胞をはじめ、マクロファージなどの免疫細胞等、様々な細胞を研究対象として扱います。

細胞の実験だけでなく、人の健康に関わる多様なテーマにも取り組んでいます。これまで、「月経」「気象病」といった、ストレスにも関係があると考えられるテーマについての取り組みも紹介してきました。ここでは、逆流性食道炎とストレスの関係についての実態調査と緩和法について検討を行った研究を紹介します。

VRによる緩和法の検討

   逆流性食道炎は胃の内容物(おもに胃酸)が食道に逆流することにより、食道に炎症を起こす病気です。食道の粘膜は胃酸に対し弱いため、食道に炎症を起こすようになります。

おもな症状は、胸やけ、呑酸、おくび、咽喉頭異常感、咳、みぞおちの痛みなどが挙げられます。適切な治療を受けなかった場合には、症状が持続することにより生活に支障を来すことも知られています。これに関連したバレット食道がんなどの腺がんも増加していると言われています。

特に高齢者に多くみられ、老化と共に下部食道括約筋がゆるくなり発症しやすくなるとされてきましたが、近年では、ピロリ菌感染者の減少(胃酸分泌の増加)や食生活の欧米化により、若い世代にも症状を訴える患者が増加しています。研究を行った学生の周りに、このような症状を訴えている患者が実際にいて関心を寄せていること、さらにその緩和について方法を探したいとの思いが研究のきっかけとなりました。

     研究は、逆流性食道炎とストレスの関係の実態に関して被験者に対する日誌観察による調査、ストレス指数測定による観察、心拍数変動による観察をはじめとする実態調査について行いました。

ストレスの測定には、食事内容や摂取時間といった内容の日誌記録と共に、体温をはじめ、スマートホンアプリケーションソフトを用いた心拍数の計測(bpm)、同じくストレス指数の計測(/100)、睡眠時間及び睡眠姿勢の記録、逆流性食道炎症状の記録、ストレスを感じる出来事があったかどうか等について詳細な記録をとりました。

緩和法についても検討を行い、サプリメント(シロタ株)の服用、VR(Virtual Reality)ヒーリングアプリケーション体験、スマートホン用瞑想アプリケーション体験を行い、この使用前後でストレス値を測定し変化を観察しました。

     結果は、逆流性食道炎の症状と食べ物や睡眠時間、ストレスが関係していること、さらに、これらが原因となり、症状を悪化させているという傾向があることが分かりました。

緩和法の検討では、ここでの被験者に対しては、サプリメント服用や瞑想アプリケーションソフトに比べて、VRモニターのヒーリングアプリケーションソフト体験でのストレス指数減少効果があることが分かりました。