人間科学部

大学院生の研究:赤血球分化におけるSATB1の機能解析【健康科学研究室】

人間科学部 環境・バイオサイエンス学科 健康科学研究室実験室にて(理学館)

   健康科学研究室は、生命科学を主な研究のテーマとしています。研究室には、卒業研究「演習Ⅱ」に取り組む学部生の4年生、「演習Ⅰ」にて卒業研究のテーマ検討などに取り組む3年生、そして修士論文の研究に取り組む大学院生が在籍しています。

ここでは、大学院博士前期課程2年、健康科学研究室(佐藤友亮教授)所属の大平さんの紹介をします。

   大平さんは、大阪市立大学医学部医学科を卒業し、長年、麻酔科医として医療に貢献してきました。現在もなお、大学院での研究に臨みながら、日々、医療の現場で活躍されています。

   大学院では、血液内科医である佐藤教授のもと、実験モデルに慢性骨髄性白血病の細胞K562を使った赤血球分化におけるSATB1の機能について研究を進めています。

SATB1(Special AT-rich sequence-binding protein 1)は、細胞の核内に認められるタンパク質の一つです。細胞内で染色体のループ構造を誘導し、遺伝子の発現を調整する機能を担うと考えられています。血球系における分化での働き、神経細胞において大脳皮質の発育での働き、腫瘍細胞(乳がん、大腸がん、膀胱がんその他)において様々な遺伝子発現を制御し、その悪性化や転移に関与するなど、さまざまな組織で機能するとされています。

これまで佐藤教授らは、SATB1の低下が造血幹細胞の老化に関与していることを報告し(Satoh et al.,Immunity,2013)、現在は大平さんと共にゲノム編集によって樹立したSATB1 knockout K562を用いて従来株Wild Type K562との比較検討を進め、造血幹細胞からの赤血球分化に対して、SATB1がどのように関与するのかをより明らかにすることを目的として研究を行っています。

   大平さんは、自身の研究だけでなく、研究室に在籍している学生らに対しても、実験に関するアドバイスなど熱心に指導をしてくださっています。ゼミへの参加や、麻酔科医としての経験を通したお話などもとても興味深く、卒業研究に取り組む学生たち、そして研究室にとって大変貴重な存在です。

 

【研究論文紹介(一部)】

   Yusuke Satoh, Takafumi Yokota, Takao Sudo, Motonari Kondo, Anne Lai, Paul W. Kincade, Taku Kouro, Ryuji Iida, Koichi Kokame, Toshiyuki Miyata, Yoko Habuchi, Keiko Matsui, Hirokazu Tanaka, Itaru Matsumura, Kenji Oritani, Terumi Kohwi-Shigematsu, and Yuzuru Kanakura. The Satb1 Protein Directs Hematopoietic Stem Cell Differentiation toward Lymphoid Lineages. Immunity, 38,1105, 2013.

   佐藤友亮, 浅沼萌花, 大辻瑠倫, 塚本皐月, 大平直子, 髙比良響.  白血病細胞株K562を用いた赤血球分化に関する基礎的研究, 神戸女学院大学論集, 69(2), 49-58 ,2022.

   佐藤友亮, 松尾亜美, 森田来実, 大平直子, 髙比良響.  RNA-Seq法によるSATB1ノックアウトK562細胞の遺伝子発現解析, 神戸女学院大学論集, 2023.

ヘミン添加実験、4年生SATB1班と
へミン添加実験、4年生SATB1班と
SATB1班と
人間科学部 環境・バイオサイエンス学科 大学院博士前期課程2年 健康科学研究室所属 大平さん