健康科学研究室は、生命科学を主な研究のテーマとしています。細胞を使った研究を多く行ってきていますが、細胞に限らず、身体の健康に関わる様々なことについて幅広く調査研究しています。ここでは、「気象病とストレス」をテーマに取り組んでいる卒業研究を紹介します。
近年、天気の変化により体調不良が起こる「気象病」の患者が病名の普及とともに増加していると言われています。気圧や気温、湿度などの天候の変動に伴い起こる不調全般とされ、具体的な症状としては、頭痛や肩こり、神経痛、関節痛など様々な症状が見られます。
ある大学における調査によれば、性別に関係なく、全体の4割近くもの学生に気象変化による不定愁訴があることが報告されています(1)。
潜在的に「気象病」の患者が多くいると考えられる一方で、このメカニズムや実態については詳しく解明されていないことが現状です。本研究室にも、実際にこの不調を日頃から感じている学生がおり、卒業研究のテーマとして取り組むことになりました。
さらに、ストレスに対する緩和法の検討も行いました。ストレスの緩和に効果があるとされるサプリメントの摂取、そしてVR(Virtual Reality)のリラックスコンテンツを体験することによる緩和法の二つです。
サプリメントは、自律神経を調節する作用を持つトリプトファンを含み、その睡眠時等における効果からストレス軽減を目指したもの(市販)を一定期間服用しました。
もう一つの緩和法であるVRは「人工現実感」や「仮想現実」と訳されます。コンテンツの中から被験者の好みに合ったヒーリングアプリを選択しました。あたかも現実であるかのようだと言われる「限りなく実体験に近い体験」によって、実際にヒーリング感覚が得られるのかどうかを、使用前後のデータで比較しました。近年提供されているコンテンツは、ゴーグルの装着だけでなく、リモコン操作によって手の動きがVR映像内に反映されるため、さらにリアルな没入感が得られるようになっていると言われています。
「気象病」による症状や受け止め方は言うまでもなく、緩和の効果についても個人差があると考えられます。そのような中でも、できるだけ被験者に合った緩和法を模索することで、より効果的な対処法、さらには周りの人々からの理解を得ることもできるような日常を探っています。
(1) 気象変化と不定愁訴との関連,「気象病」に関する東京有明医療大学に在籍する大学生を対象とした調査研究, 寺井政憲, 二宮由佳, 東京有明医療大学雑誌, 巻 12, p. 19-23, 2020