人間科学部

精神医学研究室

吉益 光一教授

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  • 精神保健
  • 発達障害
  • 公衆衛生学(疫学)
  • 社会医学
  • 環境医学

精神疾患は体の病気と違って、病態を示す生物学的指標が必ずしも明確ではないので、疫学的な指標、例えば罹患率(発症の頻度)とか有病率(病気の割合)がはっきりしていない部分があります。このため、精神疾患の疫学研究はとても重要です。特に自閉症や注意欠如多動性障害(ADHD)などの発達障害は、治療はもちろん、その原因や予防も含めてまだ多くのことが分かっていません。精神保健の立場からこのような精神疾患の原因と予防法を探ります。

精神医学は患者さんを治療する臨床医学の一部門ですが、社会精神医学という分野があるように、衛生学や公衆衛生学などの社会医学と深く関係しています。社会医学とは文字通り、その対象とする研究や臨床活動が社会と密接に関連している医学の分野です。精神医学で扱う疾患の中には、診断基準が社会の価値概念と強く結びついているものが多くあります。例えば異常性格を意味するパーソナリティ障害群の一つに反社会性パーソナリティ障害というのがありますが、犯罪行為など社会のルールに著しく反する行動などによって特徴付けられています。逆に慈善事業などの社会貢献活動に人並外れて熱心に取り組むような性格の人は異常性格とは呼ばれません。また、自閉症などの発達障害にしても、昨今は成人期、特に職場において大きな問題となっていますが、単に仕事の要領が悪かったり、コミュニケーションが苦手だったりするだけで、短絡的に発達障害というレッテルを貼られてしまうこともあり、過剰診断が問題となっています。学生の皆さんとこのような精神医学と社会の関係について考えていきたいと思います。

吉益 光一 教授 Yoshimasu Kouichi
吉益先生(教員顔写真).JPG

九州大学医学部医学科卒業
九州大学大学院医学系研究科社会医学系専攻博士課程単位取得退学
福岡市精神保健福祉センター相談指導係長、和歌山県立医科大学講師、准教授を経て現職に至る。
子どものこころ専門医。

  • 専門分野:精神医学、精神保健学、公衆衛生学
  • 学位:博士(医学)
  • その他:和歌山県立医科大学非常勤講師、愛徳医療福祉センター児童精神科非常勤医師、和歌山県警察産業医、西宮市学校精神保健コンサルタント 

【受験生の方へ】

受験勉強に励んでおられると同時に将来の進路や成績、人間関係などについて色々と悩み苦しむことも多いかと思います。精神医学は病気の原因が何であれ、人の心の苦しみを除き、癒すことが最終目標です。将来どんな仕事に就いても、大学時代に精神医学を学ぶことは大いに役立つことになると思います。