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西海准教授の研究成果がRapid Communications in Mass Spectrometry誌に掲載されました。【代謝生化学研究室】

西海准教授の研究成果が、Rapid Communications in Mass Spectrometry誌に掲載されました。

掲載された論文内容は以下の通りです。

 

論文タイトル:

User-friendly relative quantification procedure for gas chromatography/mass spectrometry-based plasma metabolome analysis

共同著者:  Shin Nishiumi, Tomonori Yokoyama, Noriyuki Ojima

掲載情報:

Volume 38, Issue 4, 28 e9683, February 2024

DOI: 10.1002/rcm.9683

https://analyticalsciencejournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/rcm.9683

論文概要:  生体内に存在する代謝物質(※1)を網羅的に分析する手法であるメタボローム解析(※2)は、近年、医学分野、微生物分野、植物分野、植物分野、動物分野など様々な研究分野に応用されています。しかし、このメタボローム解析技術は発展途上にあり、様々な研究者が、メタボローム解析技術を進展させるための研究を進めています。

メタボローム解析では、膨大な量の測定データを取り扱うことから、より正確なデータを取得するためには、どのようにしてデータ補正やデータ解析を行うかが重要となってきます。データ補正に関しては、内部標準物質(※3)を使用して測定データの補正を行うことが一般的です。そこで本論文では、メタボローム解析において、現在、広く活用されている内部標準物質補正法よりも優れたデータ補正法の検討を行いました。

メタボローム解析では、質量分析計と呼ばれる精密分析機器を使用しますが、今回の論文では、ガスクロマトグラフ質量分析計(※4)を使用し、ヒト血漿中に存在する代謝物質の測定における、より優れたデータ補正法の提案を行っています。

本論文では、購入可能なヒト血漿の分析結果を用いてデータ補正することで、メタボローム解析における分析環境が異なった場合でも、より正確にデータ補正を行うことができる可能性を明らかにしました。さらに、購入可能なヒト血漿の分析結果による補正と内部標準物質による補正を組み合わせることで、さらに正確なデータ補正が可能である可能性も示しました。

今回の研究では、ガスクロマトグラフ質量分析計の機器コンディション(例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計の分析感度が低下した状況など)が異なる場合や、測定施設が異なる場合などを想定し、このような分析環境が異なった状況でも、より精度よくデータ補正ができることを実験により明らかにしました。

近年、様々な研究分野でメタボローム解析が実施されています。今回の研究では、ヒト血漿を対象としたメタボローム解析におけるデータ補正法を提案していますが、血漿以外の試料であっても適用可能なデータ補正法であると考えられ、本研究の成果はメタボローム解析研究の発展に貢献できる可能性があります。

 

※用語説明

※1代謝物質…代謝とは、生体内で起こる一連の化学反応のことで、生物の生存や機能に不可欠とされています。この代謝の過程で産生される物質のことを代謝物質と呼び、代謝物や代謝産物と呼ばれることもあります。

※2メタボローム解析…生体内に存在する代謝物質(糖、アミノ酸、脂質、有機酸、核酸など)を網羅的に分析する手法で、一度の測定で、数十~数百種類の代謝物質をまとめて分析することが可能です。

※3内部標準物質…実試料中には含まれていない物質で、様々な分析において、分析精度向上のために使用されます。内部標準物質を実試料に加えて分析を行い、分析対象物質の測定値と内部標準物質の測定値との比をとることで、データ補正などを行います。

※4ガスクロマトグラフ質量分析計…ガスクロマトグラフと質量分析計からなる分析装置のことで、この装置を用いることで試料中の複数成分をガスクロマトグラフで分離し、質量分析計にて成分の定性や定量を行うことが可能です。

↓ガスクロマトグラフ質量分析計