人間科学部

西海准教授と兵庫医科大学皮膚科学講座との共同研究成果がDisease Markers誌に掲載されました。【代謝生化学研究室】

西海准教授と兵庫医科大学皮膚科学講座との共同研究成果が、Disease Markers誌に掲載されました。

 掲載された論文内容は以下の通りです。

 

論文タイトル:

Exploration of metabolite biomarkers to predict the efficacy of dupilumab treatment for atopic dermatitis

 

共同著者:

Shoko Miyamoto, Yasutomo Imai, Masako Matsutani, Makoto Nagai, Kiyofumi Yamanishi, Nobuo Kanazawa, Shin Nishiumi

 

掲載情報:

Volume 2023 | Article ID 9013756 | https://doi.org/10.1155/2023/9013756

https://www.hindawi.com/journals/dm/2023/9013756/

 

論文概要:

デュピルマブはアトピー性皮膚炎の治療に使われる生物学的製剤のひとつです。この薬剤は非常に高額であるにも関わらず、この薬剤による治療に対して有効性を示すアトピー性皮膚炎患者と有効性を示さないアトピー性皮膚炎患者が存在することが知られています。しかし、どのようなアトピー性皮膚炎患者群に有効であるかは依然として明らかとなっておらず、デュピルマブ治療がどのようなアトピー性皮膚炎患者に有効なのかを見出すことは非常に重要だと考えられています。そこで本研究では、アトピー性皮膚炎患者に対してデュピルマブが有効性を示すか否かを事前に予測できるバイオマーカーを同定することを目的としました。

本研究は後向き研究として実施され、デュピルマブで治療したアトピー性皮膚炎患者19名の血清を、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いたメタボローム解析に供し、血清中代謝物の網羅的解析を行いました。その結果、合計148個の代謝物が血清中で検出できました。次に、デュピルマブ投与16週間後に、EASIスコア(世界的に頻用されているアトピー性皮膚炎評価指標の1つ)が75%改善した患者群(高反応群)と改善しなかった患者群(低反応群)との間で、血清中代謝物レベルの比較を行いました。高反応群と低反応群との間では、8つの血清中代謝物(乳酸、グリセリン酸、フマル酸、ノナン酸、アラニン、オルニチン、リボース、ソルビトール)レベルに統計学的に有意な差があり、この8つの中でリボースがデュピルマブ治療効果を予測するバイオマーカーとして最も優れた代謝物候補であることがわかりました。

この研究成果は、高額な生物学的製剤であるデュピルマブが効力を発揮できるアトピー性皮膚炎患者の選択に貢献できる可能性があり、アトピー性皮膚炎患者に対するオーダメイド医療の発展にも寄与できるかもしれません。本研究の更なる進展が期待されます。

 

用語説明:

ガスクロマトグラフ質量分析計…ガスクロマトグラフと質量分析計からなる分析装置であり、この装置を用いることで試料中の複数成分をガスクロマトグラフで分離し、質量分析計にて成分の定性や定量を行うことが可能

メタボローム解析…生体内に存在する代謝物質を網羅的に分析する手法

EASI…世界的に使用されているアトピー性皮膚炎評価指標の1つ