学校臨床心理学研究室
西嶋 雅樹准教授
私たちが育つ上で,誰もが何らかの形で教育という領域を必ず体験します。そして,この教育領域での子どもや保護者との関わり,あるいは学校の先生方との連携について実践的に考える臨床心理学の分野が「学校臨床心理学」です。また,教育においては子どもとの関わりは主に生徒指導・教育相談として位置づけられ,生きることに関する学びはキャリア教育として展開されています。
「学校臨床心理学研究室」と銘打っていますが,狭い意味での学校という言葉にとらわれることなく自由に発想をしたいと考えています。
例えば学校臨床あるいはスクールカウンセリングの実践に限定することなく,広く児童期から思春期・青年期を生きる人々の心について考えてみる。この試みは,現代という時代がいかなる性質を担っているのかを知ることにつながります。
例として,アニメや漫画は,今という時代や心のあり方を考える上での素材の宝庫です。また,学校を中心とする教育の場で対象となる子どもの心について考えることは,自らの過ぎ去った子ども時代を振り返り,自己理解を深めるきっかけにもなりえます。
臨床心理学や心理臨床の実践にとって,教育という領域での実践は相談室を飛び出してのアウトリーチ的な意味ももってきます。座学に留まるのではなく実践の学として,臨床心理学・心理臨床学と教育の間に橋を架けるようなアプローチを模索します。
京都大学大学院教育学研究科臨床教育学専攻博士後期課程研究指導認定退学
三重県教育委員会事務局 臨床心理相談専門員
島根大学教育学部附属教師教育研究センター 講師
島根大学大学院教育学研究科教育実践開発専攻 講師
- 専門分野:心理臨床学,臨床心理学
- 学位:修士(教育学)
受験生の方へ
勉強をしていると「わからない」という感覚で嫌になることはないですか? この「わからない」という感覚は,新たなことを知ったり考えたりする上でとても大事な原動力です。そもそも私たちが専門的に扱う人の心は,簡単にわかるものではありません。「わからない」という感覚と付き合いながら地道に受験勉強を続けることは大学での学びの基礎体力作りにつながりますので,諦めずに頑張りましょう。
大学でお会いできるそのときを,楽しみにしています。
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研究主題
1. 児童期,思春期・青年期の心理療法
2. 学校・教育と心理臨床の連携
3. 漫画やアニメから考える私たちの心
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研究業績
【著書】(共著)
西嶋雅樹(2014).東日本大震災の被災地での活動より―生身の心理臨床家として考え続けること―.国重浩一(編著).震災被災地で心理援助職に何ができるのか?.ratik(電子書籍),Kindle版,位置No. 4796-5134.
西嶋雅樹(2008).コラム 心理臨床面接における言葉をめぐって.藤原勝紀・皆藤章・田中康裕(編著).心理臨床における臨床イメージ体験.創元社,pp.158-159.
西嶋雅樹(2007)適応指導教室における個と集団.岡田康伸・河合俊雄・桑原知子編.心理臨床における個と集団.創元社,pp.338-350.【論文】
西嶋雅樹(2022).「異界」と「異世界」.精神療法,48(1),35-39.
西嶋雅樹(2021).漫画『約束のネバーランド』にみる思春期の終わり.島根大学教育臨床総合研究,20,149-157.
西嶋雅樹(2021).竈門炭治郎と鬼舞辻無惨.島根大学こころとそだちの相談センター紀要,4,15-22.
西嶋雅樹(2021).新型コロナウイルスと『鬼滅の刃』.ユング心理学研究,13,67-78.
西嶋雅樹(2020).自殺に関する知識の調査―自殺予防教育のために―.島根大学教育臨床総合研究,19,141-149.
西嶋雅樹(2020)."化粧で飾られた姿の内にある淋しさ ―自傷行為を呈した思春期女性との面接過程―".箱庭療法学研究,33(1),39-49.
西嶋雅樹(2020).漫画『約束のネバーランド』にみる思春期・青年期の心性.島根大学こころとそだちの相談センター紀要,3,11-20.
西嶋雅樹(2019).心理臨床実践における連携―教育領域と島根大学こころとそだちの相談センターでの活動を中心に―.臨床心理事例研究,46,9-11
西嶋雅樹(2019).キャリア教育における「何になりたいか」という問いの批判的検討.島根大学教育臨床総合研究,18,133-146.
西嶋雅樹・高見友理(2019).島根大学教育学部附属学校園のスクールカウンセリングについて.島根大学こころとそだちの相談センター紀要,2,105-112.
西嶋雅樹(2019).発達障害のある青年期女性への教育相談機関における進路支援―創作活動による内的成長が支えた外部機関への接続の事例―.ヒューマン・ケア研究,20(1),1-14.
西嶋雅樹(2018).教職課程の受講生における生徒指導と教育相談に対する印象の比較―特に生徒指導に関する授業のための基礎資料として―.島根大学教育臨床総合研究,17,33-43.
仲律子・今出雅博・奥野真希子・西嶋雅樹・姫野武・前田早奈美(2017).熊本地震におけるスクールカウンセラーの緊急支援派遣について 三重県臨床心理士会被災者支援特別部会の取り組み事例.鈴鹿大学紀要Campana,23,193-199.
西嶋雅樹(2016).心理臨床面接で語られる料理イメージについて.ヒューマン・ケア研究,17(1),1-10.
西嶋雅樹(2014).震災支援における心理臨床家のメンタルヘルス.京都大学大学院教育学研究科附属臨床教育実践研究センター紀要,18,61-64.
西嶋雅樹(2010).漫画『蟲師』にみる心理学的イメージについての考察.甲南大学学生相談室紀要,17,39-51.
西嶋雅樹(2009).適応概念と適応指導教室.京都大学大学院教育学研究科附属臨床教育実践研究センター紀要,13,35-46.
Tomoko KUWABARA, Haruka SUDO, Chihiro HATANAKA, Masaki NISHIJIMA, Kenichi MORITA, Chihiro HASEGAWA, and Yasuhiro OYAMA(2008). A Study on the New Paradigm in Collaborations between Teachers and School Counselors. Psychologia, 51(4), 267-279.
高嶋雄介・須藤春佳・高木綾・村林真夢・久保明子・畑中千紘・重田智・田中史子・西嶋雅樹・桑原知子(2008).学校現場における事例の見方や関わり方にあらわれる専門的特徴.心理臨床学研究,26(2),204-217.
高嶋雄介・須藤春佳・髙木綾・村林真夢・久保明子・畑中千紘・山口智・田中史子・西嶋雅樹・桑原知子(2007).学校現場における教師と心理臨床家の「視点」に関する研究.心理臨床学研究,25(4),419-430.