精神保健福祉研究室
宮脇 英子専任講師
こころの病を持つ人は、疾患だけでなく生活のしづらさを抱えることがあります。
また目に見えない疾患や障害は周囲から理解されにくく、社会生活上での様々な困難を伴うこともあります。
精神保健福祉に関わる様々な課題について、個別の支援にとどまらず社会全体の課題へと視野を広げて議論していきます。

精神保健福祉領域では、精神疾患のある人がたとえ精神症状や障害があったとしても、新たな人生の意味や目的を見出して充実した人生を生きていくプロセスをリカバリーという概念で捉えています。様々な生活課題について、個人と社会とのつながりに着目しアプローチしていく実践がソーシャルワークです。一人ひとりのリカバリーを促進するためのソーシャルワーク実践に関心を寄せてこれまで研究や実践を積み重ねてきました。
個人の生活環境や生き方が多様化している時代において、現在の社会福祉の仕組みでは対応しきれない課題がたくさんあります。本研究室では学生のみなさんが探求したい精神保健福祉領域のテーマについて、当事者や家族をはじめ実践に関わっている支援者から学び、社会福祉学の視点から深めていくことを目指しています。

神戸女学院大学文学部総合文化学科卒業。
大阪市立大学大学院生活科学研究科前期博士課程修了。
神戸女学院大学人間科学部非常勤講師、大阪大学医学部附属病院 ソーシャルワーカーを経て現職に至る。
- 専門分野:社会福祉学(精神保健福祉論、ソーシャルワーク実践)
- 学位:修士(学術)
【受験生の方へ】
私が社会福祉学に興味を持ったのは星野富弘さんの『愛、深き淵より』という本との出会いがきっかけでした。中途障害により自分自身を不幸だと捉えていた時期から、人とのつながりやサポートを受けて生活をする中で、自己の捉え方や生き方を変容させていくプロセスがなぜ生じたのかということに関心を持ちました。
人は誰もが強さや可能性を秘めた存在であり、それを引き出し、サポートすることができるとしたらどのような方法があるのだろうという問いを持ち続けています。安心に暮らすことにとどまらず一人ひとりが生きる意欲や喜びを感じることができる生活環境、社会とのつながりとはどのようなものなのか、ぜひ一緒に考えてみませんか。
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研究主題
精神保健福祉領域におけるソーシャルワーク実践
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研究業績
[学位論文]
朝野英子(2007)回復への動機づけの低い薬物依存症者に対する生活支援のあり方に関する研究、大阪市立大学大学院生活科学研究科修士論文
[学術論文]
岡田直人、増田和高、朝野英子、鄭尚海、堂園裕美、三谷勇一、橋本力、白澤政和(2006)新潟県中越大震災における要支援・介護高齢者に対する危機管理の実態と課題、老年社会科学,vol.28-1 pp.58-65
朝野英子、栄セツコ、清水由香(2010)精神科病院長期入院者の退院に関する要因の文献的検討、生活科学研究誌,vol.9 pp.95-106
朝野英子(2011)リカバリー概念とその評価に関する文献的考察、新たな社会福祉学の構築:白澤政和教授退職記念論集, 中央法規出版,pp374-383
朝野英子、栄セツコ、清水由香、岡田進一(2013)精神科ソーシャルワーカーの長期入院者への退院支援活動における自己効力感の構造、社会福祉学,vol.54-3 pp.3-15
朝野英子、栄セツコ、清水由香、岡田進一(2013)精神科長期入院者へのソーシャルワーカーの退院支援活動における自己効力感に影響を与える要因の検討:職場環境に焦点を当てて、メンタルヘルスの社会学, vol.19 pp.25-34
宮脇英子、栄セツコ、清水由香、岡田進一(2016)精神科長期入院者への退院支援活動における支援者要因の検討:ソーシャルワーカーへの調査をもとに、メンタルヘルスの社会学, vol.22,pp.21-30
森康治、佐藤俊介、宮脇英子、池田学(2020)前頭側頭葉変性症への対応と支援、BRAIN and NERVE,vol.72-6 pp.623-632