認知情報処理研究室
三浦 欽也教授
ヒトの心にはさまざまな側面があります。その中でも知性の働きについては、古くから人工知能として研究されてきました。論理的な思考などの記号的なメカニズムについては、人工知能研究の初期からさまざまな手法が研究され、一定の成果を挙げてきましたが、非記号的な、あるいは言語化しづらいような情報の取り扱いや推論についても、ディープラーニングに代表されるように、近年急速な発達を見せています.。私の研究室では、そのような研究のひとつとして、感性を情報化してとらえるという研究もしています。最近の成果としては、女子大学生の「かわいい」という感覚が、「赤ちゃんのようにかわいい」、「女らしくてかわいい」、「価値がある」という3つの因子から成り立っていることを示すことができました。


当研究室では、人間の知性・感情・意思などを、コンピュータ上で実現できるような仕組み(モデル)とその応用について研究しようと試みています。知性のモデルの研究は人工知能の研究ということですが、それにとどまらず、感性・感情のしくみやモデルにまで範囲を広げたいと考えています。そのようなモデルがうまく構築できれば、いわば「人工感性」「人工感情」として機械に組み込むことができるかも知れません。そうすれば、機械は今よりももっと親しみやすくなるのではないでしょうか。例えば、以前、感情を持った体重計を作ることによって、ダイエットを促進するという研究をした学生もいました。そういったアイデアをいろいろと考えていきたいと思っています。
授業では、認知科学関連の科目のほかに、コンピューター関連の演習科目も担当しています。2017年度に担当したクローバーゼミでは、タートルグラフィックスを使いましたが、これをプログラミングの授業に取り入れられないか思案しているところです。

京都大学大学院工学研究科博士後期課程を単位認定退学した後、群馬大学助手、奈良先端科学技術大学院大学助手、本学助教授、准教授を経て現職に至る。
- 専門分野 人工知能
- 学位 博士(工学)
- 研究室 JD館 315号室
- オフィス・アワー 木曜日 15:00~16:30
- メールアドレス miura@mail.kobe-c.ac.jp
受験生の方へ
講義においては、人間の「知」を心理学の立場から探求する認知心理学にも触れ、人工知能と認知心理学の両面から、「知」とはどういうものか。「知」の本質とは何か、ということに迫っていきたいと考えています。
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研究主題・研究業績を見る
<研究主題>
感情・感性の情報処理モデルに関する研究
曖昧性や矛盾を扱う論理系に関する研究
近似的推論系に関する研究<研究業績>
【著書】
[共著] 山 祐嗣, 小林 知博, 山口 素子 編著, 基礎から学ぶ心理学・臨床心理学 (第7章 言語と知能), 北大路書房, 53-60, 2009【論文】
[単著] 三浦 欽也: 女子大学生における『かわいい』感覚の構造について, 神戸女学院大学 論集 59(2), 63-73 (2012)
[単著] 三浦 欽也: JavaScriptによるプログラミング教育を支援するための簡易実行ツール, 日本e-Learning学会 2012年度学術講演会発表論文集 (2012)
※ 奨励賞受賞
[共著] 三浦 欽也, 大澤 新吾, 五十嵐 善英, 金井 久美子: 高々1個の故障を含むプロセッサ網における最適な情報散布方式, 信学論(D-I), J74-D-I, 12, pp. 869-875 (1991)
[共著] 三浦 欽也, 堂下 修司, 山崎 進: 同一性公理を用いた高階節形式論理の証明系について, 信学論(D-I), J72-D-I, 12, pp.845-855 (1989)
[共著] 三浦 欽也, 山崎 進, 堂下 修司: 高階節形式論理におけるエルブランモデルについて, 信学論(D-I), J72-D-I, 2, pp.83-91 (1989)【その他】
解説: [共著] 堂下 修司, 西田 豊明, 三浦 欽也: 様相論理とその情報処理への応用(I) 様相論理, 情報処理, 29-1, pp.2-10 (1988)
書評: 「落合雄彦/金田知子編著『アフリカの医療・障害・ジェンダー』」, 女性学評論 第22号, 神戸女学院大学女性学インスティチュート, 93-97 (2008) -
卒業論文
<卒業論文項目>
感性情報に基づく情報検索システムの構築
人間と共存する道具に関する研究 - 感情を持った体重計 -
人間らしさ認知における行動意図認知の役割
罪悪感、不安、共感性が顔の表情認知に及ぼす影響 -
大学院教育
人間科学研究科では、さまざまな領域の研究者がさまざまな方法論で研究を進めており、それらの研究者とさまざまな形で交流を持つことができます。限られた領域の研究者同士で交流するのに比べ、同じ対象、同じ問題を、異なった視点、異なった方法論で捉える機会が多くあると感じています。
「人間」は極めて複雑で多面的な存在ですから、本研究科のこのような特長は、「人間」を総合的に捉えようとするとき、大きなメリットがあると考えています。そのような特長を生かすべく、本研究室では教員・院生が主体的に、相互に刺激し合える研究環境を目指しています。