家族臨床心理学研究室
國吉 知子 教授
家族という観点から、特に子ども時代のトラウマや問題行動の改善に有効な心理的援助についての研究を行っています。具体的には、関西初の親子相互交流療法(PCIT)、イメージや身体的アプローチを用いたトラウマ・ケアの実践研究に加え、音楽を用いたマインドフルネスなど音楽療法の研究などを通して、統合的視点で心の健康、回復を考えています。


本研究室では、大学院生を交えて適宜グループワーク等を行うことで、自他への気づきを深め、開かれたコミュニケーションの力をはぐくむことにも力を入れています。学年を超えた交流がゼミの温かく親しみやすい雰囲気を醸成し、ディスカッションも深まっていきます。
さらに、アクティブラーニングでの体験をベースに、日常生活の中に潜む、さまざまな問題意識を心理学的研究に結晶化させていくよう援助しています。特に臨床心理学分野の研究は、自らの親子関係、対人関係への疑問がきっかけとなり、最も関心の持てる研究テーマの決定に至ることが多いです。
そのような「心の金脈」を発掘する研究のプロセスは、実はとても楽しいもので、多くのゼミ生たちは自ら意欲的に、のびのびと研究に取り組んでいます。研究を通して自分のコアにある問題を対象化できることで大きな心理的成長が遂げられるのは、この分野で学ぶ大きな魅力だと思います。本研究室は一人一人に豊かな成長の場を提供できる、サポーティブでコラボレイティヴな空間となるようつとめています。

京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学(教育学修士)。臨床心理士。姫路獨協大学非常勤講師、同志社女子大学、佛教大学学生相談室カウンセラー、京都大学留学生相談員、京都大学非常勤講師、京都ノートルダム女子大学教授を経て現職。精神科医院での臨床心理士(非常勤)も務めている。また、心理相談以外にも、企業や様々な社会教育機関での講演やグループ実践などに数多く携わってきた。
受験生の方へ
心理学は実践的な学問です。学ぶほどに自分をより深く知り、他者の行動の意味を理解できるようになります。臨床心理学、特に家族臨床心理学の視点を学ぶことで、虐待、いじめ、不登校など、問題行動には実は大きな意味があることを理解できるようになるでしょう。「問題」や「症状」に内包されているメッセージや家族(人間関係)の力動やパターンを見抜く力を、あなたは持ちたいと思いませんか?臨床心理学という科学のメガネを手に入れて、日常生活の中に埋もれている発見のタネを一緒に探しに行きましょう!
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<研究主題>
現在の主な研究テーマは子育て支援、トラウマケア、音楽療法、マインドフルネスの4つです。特に親子関係の改善効果が高い「PCIT」という親子コミュニケーションに焦点をあてたライブコーチングによる新しい心理療法の実践と研究を行うとともに、未来のPCIT実践者の養成にも力を入れています。1.子どもと親の心の健康促進と回復
親子相互交流療法(Parent Child Interaction Therapy)の実践的研究
子どもと親の絆を深めるプログラム(Child –Adult Relationship Enhancement)の実践と子育て支援講座による親の心理状態の変化についての研究2.トラウマケアの統合的心理療法
EMDR(Eye Movement Desensitazation and Reprocessing)によるトラウマケアの実践
ホログラフィートーク(イメージ療法)によるトラウマケアの実践的研究3.音楽療法とマインドフルネス
調整的音楽療法(Regulatve Music Therapy:RMT)の実践的研究
音楽聴取が心身に与える影響についての研究<研究業績>
〈著書〉
[共著]「調整的音楽療法(RMT)—マインドフルネスに音楽を用いる意義—」『精神科治療学(岩井圭司編)』Vol.32 No.5 2017
[共著]「PCIT(親子相互交流療法)」『野呂浩史編 トラウマセラピーケースブック ―症例に学ぶトラウマ・ケア技法—』, 星和書店, 2016
[共著]表象としての身体―家族布置技法の基礎としての身体―『伊藤良子 大山泰宏 角野善宏編』, 創元社, 2009
[共著]「クライエント中心療法」「音楽療法」「臨床心理士の活動と倫理」『山祐嗣 山口素子 小林知博編 基礎から学ぶ心理学・臨床心理学』, 北大路書房,2009
[共著] 「グループワークにおける「変容」について」『岡田康伸・河合俊雄・桑原知子 編 國吉知子 心理療法における個と集団 , 創元社, 2007
[共著]「マンダラとしてのファンタジーグループ」『樋口和彦・岡田康伸編 イメージによるグループワークの実際」,(現代のエスプリ), 至文堂, 2007
[共著]「臨床心理士と子育て支援」『鎌田穣 監修 心理・福祉のファミリーサポート』, 金子書房,2003〈学術論文〉
[共著] 過剰適応の日本人母子を対象とした「親子相互交流療法」(PCIT)の事例, 遊戯療法学研究 第15巻第1号 2016
[単著]母と娘ーその光と闇ー, 神戸女学院大学女性学評論, 第29号, 2015
[単著]子どものネガティブ行動に対処する, 神戸女学院大学大学院人間科学研究科心理相談室紀要, 第16号, 2015
[単著]PCITを基軸とした“親をまなぶ”講座の実践と成果, 神戸女学院大学大学院人間科学研究科心理相談室紀要, 第16号, 2015
[共著]受動的音楽療法の意義—マインドフルネスの視点からー, 神戸女学院大学大学院人間科学研究科心理相談室紀要, 第15号,2014
[単著]“親をまなぶ”講座の目指すものー親のポジションをひきうけるー, 神戸女学院大学大学院人間科学科心理相談室紀要, 第15号, 2014
[単著]親子相互交流療法(PCIT)における限界設定の意義, 神戸女学院大学論集, 第60巻第1号, 2013
[単著]米国における新しいトラウマ治療の動向ー子どもの複合的トラウマ治療のための枠組みARC理論ー, 神戸女学院大学論集, 第58巻第2号, 2011
[単著]臨床心理士がおこなう親への支援—子どもの感情の社会化と親のかかわりー, 神戸女学院大学論集, 第58巻,第1号, 2011
[単著]地域支援意識を高める臨床心理士養成プログラムの意義と評価—地域実践活動(アウトリーチ)を中心に—, 神戸女学院大学人間科学研究科心理相談室紀要, 第12号, 2011
[単著]相手を理解する難しさ~クライエントの「わからなさ」に向きあうこと~,天理大学心理相談室研究紀要,2007
[単著]クライエントを守るセラピストの態度について~アカウンタビリティの視点から~,京都光華女子大学大学院カウンセリングセンター研究紀要, 2007
[単著] マンダラ塗り絵の心理的意味についての一考察, 京都ノートルダム女子大学心理学部・大学院心理学研究科研究誌「プシュケー」 第5号, 2006
[単著] 心理臨床における身体感覚の重要性, 京都ノートルダム女子大学心理臨床センター心理相談室紀要 第2号,2006〈学会発表(単独あるいは筆頭発表者)(2014年~)〉
[単]1回のカウンセリング(傾聴)による変化, (ポスター発表), 日本心理臨床学会第36回大会, 2017
[単]ドロップアウトを防ぐ—PCITの継続意欲を高めるきょうだいセッションの導入—, (ポスター発表), PCIT-Japan CARE-Japan合同研究会, 2017
[単]A Case of PCIT(Parent Child Interaction Therapy) applied for a Japanese Mother which improved her Negative Cognition to a Child,(ポスター発表), International Psychology Congress 2016, パシフィコ横浜 2016
[単]親子相互交流療法(PCIT)による母親の否定的認知の改善―癇癪を起こす8歳男児とその母親へのPCITの適用, (口頭発表), 日本心理臨床学会第35回大会, 2016
[単]神戸女学院大学におけるPCITとCAREの実践と展開, (ポスター発表), PCIT-Japan CARE-Japan 合同研究会, 2016
[共]PCITとCAREの共通点と相違点―実践から見えてきた知見と可能性、そして今後の課題―,(学会主催シンポジウム座長) PCIT-Japan CARE-Japan 合同研究会, 2016
[単]調整的音楽療法(RMT)—音楽を用いるマインドフルネスー, (口頭発表), マインドフルネス研究会, 2016
[共] PCIT(親子相互交流療法)を主軸とした「親をまなぶ講座」の効果~PCITと子育て支援講座との連携~, (ポスター発表), 日本心理臨床学会第34回大会, 2015
[共] PCIT Applied for a Japanese Mother and the Child with Over-Adaptation: First Case Treated with PCIT at Kobe College in Wsetern Japan,(ポスター発表),PCIT International Convention 2015, (Pittsburgh, PA, U.S.)
[単] 親子相互交流療法(PCIT)―親子をはぐくむ遊戯療法―, (学会主催ワークショップ), 日本遊戯療法学会第21回大会, 2015
[単] PCITにおける母親の否定的認知の改善, (ポスター発表), PCIT-Japan & CARE-Japan合同研究会, 2015
[共]親子相互交流療法(PCIT)による親子の変化,(口頭発表) 日本遊戯療法学会第20回大会, 2014
[単]親子相互交流療法(PCIT)とは, (チュートリアルワークショップ), 日本心理学会第78回大会
[共]親子相互交流療法(PCIT)の効果について,(ポスター発表), 日本心理学会第78回大会, 2014
[単]トラウマ記憶が特定できない問題へのEMDR適用,(口頭発表), 日本心理臨床学会第33回大会, 2014
[単]イメージが導く記憶, (口頭発表), 日本箱庭療法学会, 2014
[共]神戸女学院大学におけるPCITの取り組み,(ポスター発表), PCIT-Japan CARE-Japan合同研究会, 2014
[単]神戸女学院大学におけるPCIT導入プロセスー西日本初のPCIT実現に向けて—, (ポスター発表), PCIT-Japan, CARE-Japan 合同研究会, 2014 -
卒業論文題目
本ゼミにおける学位論文(博士論文・修士論文・卒業論文の一部)
【親子関係に関するテーマ】
・「過敏型」自己愛人格傾向と母娘関係―親からの期待・罪悪感との関連ー
・父と娘の関連性―父が娘に与える恋愛観・結婚観への影響についてー
・青年期女子の規範意識と母親の養育態度の関連性
・母親の養育態度および母子密着が娘の自立に与える影響
・母親と娘のストレス・コーピングの類似性について
・母親の就労形態が娘のキャリア形成に与える影響
・父娘関係についてー「となりのトトロ」「リトルマーメイド」を題材に
・青年期における対人恐怖心性と親子関係の関連について
・父娘間の情緒的結びつきが娘の自尊感情に与える影響
・親への反抗の形態と攻撃性の関連について
・嫁姑関係が娘に与える結婚観について
・女子大生における母娘関係と娘の依存傾向・自尊感情との関連—共依存関係・絆関係の母娘についてー
・母娘関係についてー母親の言葉かけが娘の自己効力感に与える影響【身体性に関するテーマ】
・女子大生の痩身願望とボディイメージ
・アレキシサイミアとクローン病の関連について
・月経前症候群と人格特性・社会的要因【音楽に関するテーマ】
・合奏による気分と印象の変化について
・音楽聴取による気分変化についてー好みの音楽と指定音楽の比較―
・オルゴール音楽聴取が心身に与える効果
・BGM聴取が作業効率に及ぼす影響について
・自然環境音聴取がストレスに与える影響について
・音楽選択行為が自己関連語再生の気分一致効果に及ぼす影響
・おとぎ話における音と音楽―「歌」と心理療法の場で語られる言葉との関連からー
・打楽器演奏による気分変化の測定【その他のテーマ】
・ポジティブリフレーミングを行うことの効果についての研究
・アサーティブな会話が印象変化に与える影響
・女性の笑顔の評価について
・性的少数者に対する意識への心理教育の効果について
・嫉妬感情と怒りの関連性について
・いじめられ体験が認知的判断に及ぼす影響
・大学生の他者に対する依存性と攻撃性の関連について
・女子大生の性役割観と結婚後の就労継続について
・ピアス経験の有無による女性性の検討—ピアスが持つ多義的意味合いについて—
・ファン心理についての研究—ファン心理・ファン行動と充実感との関連について—
・犬の動画視聴による心理的影響ー人とのふれあい場面の有無による比較ー
・犬の動画視聴による気分変化
・水と火のイメージを用いた描画法の研究